パリ ああ無情

おしゃれじゃないパリの日常

La cravate 『ネクタイ』

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地味なフランス映画を見てきたわ。

マリン・ルペン率いる極右の政党、国民連合で、一支持者として活動する地方の青年、バスチャンが主人公のドキュメンタリーよ。

20歳ながら既に5年も極右を支持しているというバスチャンが、2017年の大統領選をサポートするところから始まるの。

 

街頭でチラシを配ったり、ナンバー2のプロパガンダをYouTube用に撮影、編集をしたり、会合に出かけたり、同じような仲間と議論したり、やらせ一切なしな感じだから、ドラマチックな感じは全くなし

 

殺風景なワンルームのアパートでケバブ!を食べていたり、レーザーゲームが好きで、ゲームセンターの支配人の仕事をしていたりと段々人間像が明らかになってくる中で、少年の時に自殺未遂をしたことが語られたり、極右の前はネオナチのような集団に属していたり、家族との不和、学業放棄などがわかるの。

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 極右政党の支持層はどこの国でも、現状に強い不満を持つ失業者、低所得者が多いから、マクロンを支持している人たちの極北にいる人たちといっていいかもしれないわね。

 

ただ極右政党は、移民問題が同時に自分たちの飯のタネである訳で、それを解決するわけが無い、解決したら自分たちは用無しという矛盾を孕んでいるわけで。

 

バスチャンも結局失望して、党を去るところで終わりなの。

 

ネクタイが意味するものは何ぞや?というところなんだけど、ルペン一家の極右活動は家業みたいなもので、旗揚げした父親はわかりやすく、反ユダヤ、反イスラムで、蛇蝎のように嫌われていたにも関わらず、そこからの脱悪魔主義が成功して、クリーンな政党に近づきつつあるシンボルということらしいの。

簡単に言うと、ヒール役のダンプ松本やブル中野がメイクを落として、バラエティに出て国民的タレントを目指すっていうような感じかしら? 

 

ところでこのルペン父娘、クリーンにしようと努力している娘を尻目に、父親のジャンマリー・ルペンがユダヤ人大物歌手に「もう一度窯の中で焼いてやろうか」など、足を引っ張るような言動が絶えず、娘が愛想をつかして親子断絶の憂き目に。

 

父親は日本に滞在していた時に、石原慎太郎を表敬訪問したそうよ。

受ける方も受ける方だわ。ちなみに石原さん、当地ではultra nationaliste と紹介されていたのよ。ご本人はご満悦でしょうね。

 

国営放送のドキュメンタリー並みの出来の割には批評家や観客の評価がよいのよね。

観客も、支持者なのか、単なる政治好きの観客なのかよくわからなかったけど、自分が一番場違いだったことは確かだわ(汗)。

 

まあ間違いなく日本では公開されないでしょう。

 

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